書評「最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―」二宮敦人

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おひさしぶりです。

 

最近は新型コロナの影響で中国からの輸入も滞りがち。

空輸便が飛ばなかったり、減便で値上げになったり、船だと遅れない商品があったりと、ちょっとやりにくいです。

 

コロナの影響でやむおえず自宅待機になってしまっている方もいるかと思います。

そんな時は自分を見つめ直してみるのもいいですね。

 

今回は最近読んだ面白かった本を紹介したいと思います。

 

著者が東京藝大生に聞き取りを行い、それをまとめた本。

 

東京藝大といえば日本で唯一の国立総合芸術大学で、芸術系でいちばんの難関大学だ。

真剣に芸術に向き合っている若き天才たち。

一見変人に見えるが、本人たちにとってはいたって真面目。

それぞれが個性豊かで、それぞれが自分を素直に表現していて、それぞれがとても魅力的なのだ。

 

藝大の卒業生を調べてみたら、そうそうたるメンバーだった。

野村萬斎、葉加瀬太郎、日比野克彦、村上隆などなど。

坂本龍一も藝大の卒業だ。

 

この本に出てくる学生もひょっとしたら数年後に大成しているかもしれない。

 

その中で気になった学生たちを紹介していこう。

 

昔はスプレーで壁やシャッターに絵を書いていた高橋さん

スプレーで壁やシャッターに絵を書くことはグラフィティと呼ばれ、一種のアートである。

中学生のころからグラフィティをしていた高梨さん。グラフィティで警察に捕まったこともあるそうだ。

 

捕まったのち、グラフィティをやめ、鳶職を経てホストクラブの経営者をしていた。

そんな彼が藝大で日本画を学んでいる。

どうしてなのだろう。

 

理由を聞くと「刺青」の勉強をしたかったからだという。

でも高橋さんは刺青は言い訳だったかも、と話す。

 

「絵をやりたい」と素直に言うのが照れくさく、刺青のため、ということにしておいたとのこと。

 

ずっと絵がやりたかったんでしょうね。

若いころは本当に好きでグラフィティを描いていて、

それができなくなって別の仕事をしていても、

やっぱり絵が好きだという気持ちが抑えられなかったんでしょう。

 

そして絵を描くことに「戻って」きた。

高橋さんにとっては絵を描くことが本来の自分なんでしょう。

あなたにとって本来の自分とは何ですか?

 

 

著者の奥様は藝大生

著者の奥様は芸大生である。

著者がこの本を描くきっかけとなったのが、彼女の言動があまりにも面白すぎたからだそう。

(なれそめが気になるところだが、それはこの本の最後に収められている学長との対談を読んでほしい。)

 

感性が独特な彼女だが、芸術家の片鱗を覗かせるエピソードがある。

 

彼女、彼女の母、妹、従姉妹の四人で海外旅行に行き、ルーブル美術館に入ったときの出来事。

母は言う。

「ルーブル美術館でね。本当に、全然動かなくなっちゃって。」

 

彼女は延々五時間以上も「サモトラケのニケ」の彫像がけを見つめ続けたらしい。

 

作者不詳の「サモトラケのニケ」の彫像。紀元前190年頃の制作とされている。

この作品を介して、当時の作者が作品に込めたメッセージを、

二千年以上たったこの瞬間に著者の妻が受け取っていたのである。

 

芸術とはこれほどまでに人の心を動かすものなのか。

 

作品には作者からのメッセージが込められている。

それを感じられるかはその人次第。

芸術とは作品を介したコミュニケーションでもあるのだ。

 

仮面ヒーロー「ブラジャー・ウーマン」

隊モノのパクリのように思われるかもしれないが、やっている立花さん(女性)はいたって本気だ。

 

ブラジャーを仮面のように顔につけ、上半身はトップレス。

乳首の部分だけ赤いハートマークで隠し、下半身はピンクのホットパンツに黒の網タイツ。

 

藝大では人気者のようで、アイドルのような扱いらしい。

(彼女がどんな人なのか、興味のある人はググってみるといい。きっとそのセクシーさに魅了されるであろう。)

 

ブラジャー・ウーマンにはライバルがいるという。Tバック・ウーマンだ。

豊満な胸のブラジャー・ウーマンに対し、Tバック・ウーマンは胸は小さいが美しいお尻を持つ。

設定も完璧だ。

 

どうして立花さんはブラジャー・ウーマンをやっているのだろうか。

恥ずかしくはないのだろうか。

 

「本当に美しいものは脱いでもエロくないはずなんです」

 

女の子には「かっこいい」「きれい」と言われるようだが、男の子はちょっとエッチな目でみられるそうだ。

 

「私、小さい頃、不細工だと言われ続けていたんですよ。でも、それで思ったんですよ。ブスは人を不快にするって。それで綺麗になろうと決めました。」

それがブラジャー・ウーマンへと繋がっているのだ。ちゃんと体は鍛えているらしい。

 

立花さんは決してふざけてやっている訳ではなく、大真面目なのである。

 

「よくわからない自分を表現するには、まず自分と向き合わなくてはならない。

自分の好きなところも嫌いなところも見つめ、それを描く。自分をさらけ出す。」

 

立花さんが自分と向き合った末に出てきたのがブラジャー・ウーマンなのだ。

 

「ちょっと前までは作品はマスターベーションと思っていました。」

 

立花さんは作品を作る際、すごく背景を練り込む。

それは彼女のこだわりでもあるし、自分への誠実さ。

でもそれが他人に伝わるかどうかはわからない。

自己満足ではないかと思った時期もあったそう。

 

でも今は、何かしら感じてくれたらそれでいいと思うように変わったとのこと。

 

立花さんは自分と対峙し、自分をさらけ出し、その想いを「ブラジャー・ウーマン」に込める。

そこから何を感じとるかはあなた次第なのだ。

 

いかがだったでしょうか?

今回は3人の藝大生について書いてみましたが、他にも魅力的な藝大生が何人も紹介されていました。

 

それぞれに自分の芸術と向き合い、若いがための葛藤もあり、

一見変人に見える芸術家も、本人の中ではいたって真面目にやっているんです。

 

自分に正直なあまり変人に見える。でもそれって素晴らしい。

自分を知って、自分を素直に出していけばいいんだ。

この本に紹介されていた藝大生のように。

 

みんな違ってみんな素晴らしい。

 

あなたも自分に素直になってみたら違う世界が開けるかもしれませんよ。